ご挨拶・メッセージ

ご挨拶

MUSCATプロジェクト 顧問

京都大学医学教育・国際化推進センター 教授

片岡 仁美

Hitomi Kataoka

MUSCATプロジェクト 顧問

京都大学医学教育・国際化推進センター 教授

片岡 仁美

Hitomi Kataoka

岡山大学病院のDE&I(Diversity, Equity and Inclusion)の取り組みは現在院内でも浸透しつつありますが、病院を挙げての取り組みが始まったのは2007年にさかのぼります。文部科学省医療人GPに「女性を生かすキャリア支援計画(申請者、取組担当者片岡仁美)」が採択されたことを機に、岡山大学病院では女性医師のキャリア支援がスタートしました。

2008年には現在のキャリア支援枠のプロトタイプである「女性支援枠」制度がスタートしました。同制度は出産、育児、介護などでフルタイム勤務が難しい方が自身の希望に沿ってオーダーメイドで働き方を決めることができ、さらに増員として現場復帰できる制度で、当時全国発と言ってよい画期的な制度でした。当時は、働き方の多様性はほとんどなく、フルタイム勤務ができなければ現場を去るしかない状況で、臨床現場に戻りたいけれど戻れない、といった声も多く聞きました。日本医師会、各学会などの調査では約4割の女性医師が離職を経験するというデータが出されましたが、岡山大学卒業生、入局者の協力を得たアンケートでも同様の結果でした(1)。離職(育休、産前産後休暇などを含まない)を経験した方のうちほとんどが1-3年以内に現場復帰するものの現職復帰は3割というデータもあり(1)、一時的にも柔軟な勤務体制を取り入れて現場に戻りやすくすることは喫緊の課題でした。キャリア支援枠はまさにそのようなニーズに応える制度で、現在本制度を利用された方は180名を超え、女性に限らず男性の利用者も少しずつ増えています。そして、本制度利用者の5割以上が制度利用後は地域の病院で勤務を継続、岡山大学病院で勤務する女性の助教の1/3が本制度利用者、という実績からも、本制度が地域医療に貢献し、医師のキャリア構築に寄与するものであることが示唆されます。本制度は各大学にも広がり、現在同様の制度を取り入れている大学病院は多数となっています。我々は、そのような取り組みを現場のニーズから作り上げ、制度を利用する方、また現場を支える方が手を取り合ってこの制度をより良いものとしてきたことを誇りに思っています。

2009年には国立大学病院系としては全国5番目に病児保育ルームが開室されました。我々は、開室までの準備とその後の運営に継続的にかかわっており、コロナ禍という難局もあったなか2022年度から岡山市の委託事業にも採択頂き、学内からだけでなく地域の皆様にも利用していただける開かれた病児保育ルームとして地域にも貢献しています。

我々の活動は2009年度までは文部科学省のプロジェクトとして運営されましたが、2010年度からは岡山県の委託事業として御支援を頂き活動を継続できております。2010年度からは活動の名称を「MUSCATプロジェクト」とし、さらに発展させています。このように岡山県の深い御理解と御支援を頂いていることを深く感謝するとともに、一層地域に貢献できる活動でありたいと願っております。

地域貢献を前面に打ち出した活動は2016年から開始した新見プロジェクト(PIONEプロジェクト)が象徴的です。新見出身の溝尾医師がプロジェクトリーダーとなり、新見地区での医療人を中心とした人材育成(シミュレーショントレーニングコース開催によるスキルアップ)、新見地区の住民の方と協働するシンポジウムの開催など多彩な活動を展開しています。

また、学生教育の重要性も認識し、2015年度からはプロフェッショナリズム教育を企画運営し、未来の医師の育成にも貢献しています。

MUSCATプロジェクトは2010年から医療人キャリアセンターMUSCATが運営し、2020年に岡山大学病院にダイバーシティ推進センターが設置されてからは同センターが運営しております(2023年度より医療人キャリアセンターMUSCATはダイバーシティ推進センターに統合されました)。私は、2007年当初から本プロジェクトの責任者として取り組んでまいりましたが、2023年度より京都大学医学教育・国際化推進センターに異動することとなりました。異動を機に本プロジェクトの責任者をこれまで共に活動を支えてくださってきた藤井智香子先生にお願いし、自身はプロジェクトの顧問として活動をバックアップすることとなりました。これまで本プロジェクトを支えてくださった皆様に厚く御礼を申し上げますとともに、今後ともプロジェクトを見守り、御支援頂けたらとお願い申し上げます次第です。

MUSCATプロジェクト 責任者

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 講師

藤井 智香子

Chikako Fujii

MUSCATプロジェクト 責任者

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 講師

藤井 智香子

Chikako Fujii

令和5年度よりMUSCATプロジェクト責任者を拝命させていただきました。私自身もMUSCATプロジェクトの支援制度を利用して専門医や学位を取得させていただき、プロジェクトの重要性と存在意義を実感してきました。その後MUSCATプロジェクトに少しでも恩返しができればと思い、小児科医として、ますかっと病児保育ルームやペアレント・トレーニングを担当させて頂きました。

女性医師のキャリア支援を中心にスタートした本活動ですが、時代の変化とともにより多くの医療人を支援し、地域医療に貢献しながらダイバーシティ&インクルージョンを推進していきたいと思っております。今後とも皆様のワーク・ライフがともにより充実したものになりますよう、ともに成長する存在になれればと思っています。今後とも尚一層の御理解と御支援を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

PIONEプロジェクト 責任者

医療法人思誠会 渡辺病院 副院長

岡山大学 非常勤講師

新見公立大学 非常勤講師

溝尾 妙子

Taeko Mizoo

PIONEプロジェクト 責任者

医療法人思誠会 渡辺病院 副院長

岡山大学 非常勤講師

新見公立大学 非常勤講師

溝尾 妙子

Taeko Mizoo

PIONEプロジェクトは2016年に始動し、地域で働く女性医師支援と地域の医療人の育成を目的とし、新見地区を拠点に活動しています。岡山大学キャリアセンターMUSCATの支援の下、新見市行政や新見公立大学等と協働し、地域が主体となり地域の特性に合った取り組みを展開しています。  

活動の柱の1つ目は地域の医療人のキャリサポートです。地域の看護師や介護士を対象にシミュレーショントレーニングを年2~3回行っています。指導者養成コースもこれまでに2回開催し、新見市内の看護師がファシリテーターとして指導しています。また、二次救命講習であるAdvanced life supportコースも随時開催し、看護師と救命士がファシリテーターを担い多職種の輪が広がっています。

活動の柱の2つ目は、地域の医療人とのネットワークの構築です。過去4回開催したPIONEシンポジウムでは、住民と医療者が一緒に医療課題について話し合い、相互理解が深まりました。今後も医療人と地域住民が交流する企画を考案していきたいと思います。

キャリアセンターMUSCATが地域で働く女性医師を支援することで、地域で新たな試みが行われ、地域医療の充実に繋がると実感しています。新見での取り組みが他の地域にも広がるよう、成果を発信していきたいと思います。

今後も地域の医療人や住民と共に試行錯誤しながら本事業を向上させ、地域医療がより発展するよう努めて参りますので、何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

MUSCATプロジェクト 教育企画担当

岡山大学 総合内科学分野 講師

小比賀 美香子

Mikako Obika

MUSCATプロジェクト 教育企画担当

岡山大学 総合内科学分野 講師

小比賀 美香子

Mikako Obika

2009~2010年に、岡山大学病院キャリア支援制度を利用させていただきました。大変お世話になりました。その後、岡山大学病院卒後臨床研修センターを経て、現在は総合内科でスタッフとして勤務し、お陰様で毎日とても充実しております。私は1998年に医学部を卒業いたしましたが、その頃と、現在の女子医学生・若手女性医師がキャリアについて抱えている悩みが変わっていないことに驚き、危機感を感じております。日本の医学界における真のジェンダー平等の実現のためには、根強い性別役割分担意識、長時間労働など包括的に解決すべき問題が山積しております。医療人キャリアセンターでの「キャリア教育」あるいは「プロフェッショナリズム教育」を通して、性別に関係なく、ワークもライフも自然体で楽しむことのできる医療人育成に少しでも貢献できればと考えております。そして、それがキャリアセンターに対する恩返しでもあり、次世代に対する贈り物にもなるのではないかと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

メッセージ

国立大学法人 岡山大学 学長

那須 保友

Yasutomo Nasu

国立大学法人 岡山大学 学長

那須 保友

Yasutomo Nasu

岡山大学は、新ビジョン「誇りと希望の学都・岡山大学~不易流行の経営改革~」をのもとに更なる発展を目指しています。すなわち、岡山大学に関わる人々、そしてこれから関わる人々(マルチステークホルダー)の持続的で多様な幸せ(ウェルビーイング)の実現を追求することを「不易」と定義し、国内外の社会情勢を見極め、国の施策や地域の思いを先取りし先導する組織経営改革・人材育成・研究を行うことを「流行」と定義しています。また、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動に取り組み、持続可能な社会の実現を牽引しております。SDGsのゴールの一つにジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る事がかかげられています。

医師の働き方改革が注目を集めている昨今ですが、先駆けて平成19年度に始まった『女性を生かすキャリア支援計画(文科省)』では、女性医師の柔軟な働き方が岡山大学病院に導入されました。平成21年度に岡山県への委託事業となり継承された『MUSCATプロジェクト』では、着々と実績を上げ本年度までに180名以上の復職医師が利用しました。復職支援を受けた後は地域医療の現場で貢献する医師も増えています。「人を育て、支える」システムを通じて地域の医療に貢献する仕組みづくりは、持続可能な人材育成システムとして、また地域と手を取り合ってウェルビーイングを実現する取り組みとして成果を出していますが、さらに5年後、10年後に一層豊かに実を結ぶでしょう。

このような活動に長い間ご理解を示していただいている岡山県に深く感謝し、今後も本事業が関係各位にご協力を賜りながら大学と地域を結ぶ活動にさらに発展できるよう祈念しております。

国立大学法人 岡山大学 理事(企画・評価・総務担当)

三村 由香里

Yukari Mimura

国立大学法人 岡山大学 理事(企画・評価・総務担当)

三村 由香里

Yukari Mimura

年齢や性別、障害の有無や国籍に関わらず、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現が求められています。また、様々な考え方やそれぞれのライフイベントに応じて、自分らしく働き続けることができることは、大学にとっても重要なことです。

岡山大学のダイバーシティ推進本部で行っている男女共同参画や次世代育成支援の取り組みを、鹿田地区ではダイバーシティ推進センターが協働して実践されていることは大きな意義があると思います。もともと医療施設では看護師の女性比率は高率ですが、女性医師の比率も年々増加傾向にあり、特に医学部医学科入学者に占める女性の割合は約3割となっています。男女ともに働きやすい環境をつくるために、ダイバーシティ推進センターでは「プロフェッショリズム」の授業を担当し、男女共同参画やキャリア形成について男女が共に学ぶ機会を設けています。医学部1年生からの教育を通して、より良い医療人を目指して早期の意識改革を目指すことにも挑戦し続けています。

この取組に対しての岡山県の継続的な御支援に対して深く感謝を申し上げるとともに、活動の輪がさらに岡山県下に大きく広がり発展するよう願っております。

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター センター長

岡山大学病院 病院長

前田 嘉信

Yoshinobu Maeda

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター センター長

岡山大学病院 病院長

前田 嘉信

Yoshinobu Maeda

2007年度より文部科学省医療人GPの採択を受け開始した「女性を生かすキャリア支援計画」は、2010年度より岡山県からの委託事業「MUSCATプロジェクト」として継続され、今年17年目を迎えました。この支援制度をこれまでに190名以上の女性医師が利用し、地域の病院でも多くの女性医師が活躍しています。また、最近では支援制度を男性医師も利用するようになり、男女共同参画が一層進んでいます。また、2014年度から開始された新見地区を中心とする医療人支援活動(PIONEプロジェクト)も継続的な取り組みを続けています。

多職種の医療人がそれぞれの現場で活き活きと働き続けるためには、継続的なキャリア支援、生涯教育、次世代育成活動が必須であり、それらのサポートは岡山大学病院の使命と考えております。岡山大学病院では2020年にダイバーシティ推進センターを設置し、その課題に病院全体として取り組む体制を整えました。2021年度には厚生労働省女性医療職等の働き方支援事業に、2022年度には厚生労働省子育て世代の医療職支援事業に続けて採択され、夜間勤務環境整備として夜間保育ルーム設置や病気療養と勤務の両立と調和のための新たな働き方の提案など、さらに働く人のウェルビーイングという観点で活動を展開しました。

今後も岡山県をはじめ、地域の医療機関等、関係各位にご協力を賜りながら本事業がさらに発展できるよう祈念しております。

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 副センター長

岡山大学病院 聴覚支援センター 准教授

片岡 祐子

Yuko Kataoka

岡山大学病院ダイバーシティ推進センター 副センター長

岡山大学病院 聴覚支援センター 准教授

片岡 祐子

Yuko Kataoka

本邦で男女共同参画の必要性が謳われた社会基本法が制定されて20余年が経過しています。かつては出産前後休暇、育児休暇の整備が不十分で即復職、もしくは退職といった働き方が余儀なくされていた女性医師も、今や時短勤務も含めた制度が充実し、定着してきました。

岡山大学病院では、全国に先駆けて2010 年度より、女性医療人の支援と男女共同参画の実現を目指して「女性を活かすキャリア支援計画(MUSCATプロジェクト)」を導入してきました。この事業では既に 200 人を超える医療者のキャリア支援、ワークシェアリング支援を実施してきました。これまでの本活動については、委託事業として多大なご支援を継続していただいている岡山県をはじめ、多くの支援者の方々にご協力ご指導をいただきました。改めて深く感謝を申し上げたいと思います。2019年には、岡大病院ダイバーシティセンターを設置し、男性も含めた介護や育児休暇、復職、地域医療等へと支援を拡げてきました。

昨今の男女共同参画では、理系への進学者および研究者、議員、管理職等の女性割合の向上が強調されています。即ち男女共同といえども産前産後に代表される特定のライフイベントのみにスポットを当てた支援だけでなく、むしろ幅広い年代層、背景を含む女性たちへの取り組みが要されているのが現状です。さらに、「ダイバーシティ」として、性別だけではなく年齢、人種や国籍、障がいの有無、宗教・信条、価値観、更にキャリアや経験、働き方、また個人の能力や特性等の多様性を含んだ概念です。

2021年5月、岡山大学は「ダイバーシティ&インクルージョンポリシー」を制定し、多様な属性・個性を持つ一人一人の構成員がお互いの価値を理解しあい尊重し、それぞれの特性を活かして共に成長できる大学となることを宣言しています。このようなダイバーシティ&インクルージョンの実践により、大学組織の創造性、革新性、しなやかさをより一層高め、本学の目的である「人類社会の持続的進化のための新たなパラダイム構築」を目指します。

岡山大学病院ダイバーシティ推進センターとしては、多様性を認め合い、様々なステークホルダーと協働するための風土を醸成し、幅広い年齢層で、よりよく働き、よりよく生きられるような“Well-being”を軸とするダイバーシティ施策の導入を進めていきます。多様な人材のもつ知識や価値観、能力を発揮させることは、自由な発想の喚起や生産性の向上、ひいては新たな価値創造、イノベーション創成に繋がるというポテンシャルを秘めています。各人が得意分野を活かして長く医療に携わり、活躍し、地域医療も含めて広い範囲で貢献することを実現したいと考えています。そして、多様性の豊かさを取り入れることで、医療、教育、研究様々な分野で岡山大学病院がより発展していくことを願っています。

岡山県保健医療部 保健医療部長

梅木 和宣

Kazunori Umeki

岡山県保健医療部 保健医療部長

梅木 和宣

Kazunori Umeki

岡山県内には、令和2年末時点で1,339人の女性医師がおられ、近年は2年ごとに1%ずつ、特に20~30歳の若年層を中心に増加傾向にあります。こうした中で、出産や育児等のライフイベントとキャリア形成や医師としての勤務を両立させていただくことは、本県の保健医療提供体制を確保する観点からもたいへん重要です。

このため県は、平成22年度から女性医師の離職を防ぎあるいは再就業を促進するために、岡山大学に委託して女性医師キャリアセンターを運営していただいており、毎年約10名の女性医師の復職が叶うなどその充実した取り組みは関係者から高い評価を得ています。

これからも、キャリア形成に関する相談や支援、夜間保育の拡充などの取組をさらに進め、安心して職場に復帰して働き続けることができる環境を整え、多くの女性医師に仕事と育児等を両立させていただき、併せて、人生を豊かなものにしていただきたいと願っております。